一棟アパートの売却は、専門的な知識や複雑な手続きが伴います。特に売却が初めての方にとっては、「何から手をつければ良いのか」「どんなトラブルが起こりうるのか」と不安に感じることもあるでしょう。しかし、ご安心ください。事前に起こりうるトラブルの種類と、それらに対する適切な予防策を知っておけば、安心して売却を進めることができます。
この記事では、アパート売却において特に注意すべきトラブルと、その具体的な予防策について、アパート売却初心者の方にも分かりやすく解説していきます。最後までお読みいただくことで、売却プロセスにおけるリスクを最小限に抑え、スムーズな取引を実現するためのヒントが得られるはずです。
売却プロセスで頻発するトラブルとその予防策
アパート売却の過程で遭遇しやすいトラブルはいくつかありますが、ここでは特に注意すべき3つのカテゴリーと、それぞれの詳細な予防策をご紹介します。
1. 契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)に関するトラブル
アパート売却で最も多く、かつ深刻なトラブルの一つが契約不適合責任に関するものです。これは、引き渡した物件が売買契約の内容に適合しない(例えば、契約時には知らされていなかった雨漏りや設備の故障など)場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。
この責任は、売却後に発覚した不具合に対して、買主が修繕費の請求や損害賠償を求める可能性があるため、売主にとっては大きなリスクとなります。
●予防策:
売却前にアパートの現況を徹底的に調査し、雨漏り、シロアリ被害、建物の傾き、設備の故障箇所などを洗い出しましょう。これらの情報を物件状況報告書に明確かつ正直に記載し、売買契約前に買主へ提供し、十分に説明を行うことが極めて重要です。
可能であれば、売却前に第三者の専門家(建築士など)による建物診断(ホームインスペクション)を実施し、客観的な情報を開示することも有効です。
また、個人が売主の場合、売買契約書に契約不適合責任の免責事項や、責任期間を限定する特約を設けることも検討しましょう。
2. 入居者に関するトラブル
一棟アパートの売却では、現在の入居者との関係や、賃貸借契約に関する知識不足が原因でトラブルが発生することもあります。
●予防策:
全ての入居者との賃貸借契約書の内容を一つずつ丁寧に再確認し、家賃、共益費、更新料、敷金・礼金の額、契約期間、特約事項などを詳細にリストアップしておきましょう。家賃滞納の有無やその状況、入居者からの過去のクレーム履歴とその対応状況についても、正直かつ正確に買主に伝えます。
不動産会社を通じて行われる重要事項説明において、現在の賃貸借契約の内容や入居状況、滞納状況などを買主に詳細かつ正確に説明してもらいましょう。管理会社に管理を委託している場合は、売却後の管理会社の引継ぎについて、買主と十分に話し合っておくことも大切です。
3. 測量・境界に関するトラブル
土地の境界が不明確な場合、後々隣地とのトラブルに発展する可能性があります。これは、売却後の買主と隣地所有者との間で問題になるだけでなく、売主の責任が問われることもあります。
●予防策:
売却前に土地家屋調査士に依頼し、確定測量を実施し、最新の確定測量図を取得しておくことを強く推奨します。これにより、隣地との境界を明確にし、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。
もし、敷地内に隣地の建物や植栽などが越境していないか確認し、越境物がある場合は売買契約前に買主にその事実を正確に伝え、今後の対応について協議しておきましょう。売買契約書に、境界に関する事項(確定測量図の有無、越境物の有無と対応など)を明確に記載しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
まとめ:事前の準備と情報開示がトラブル回避の鍵
一棟アパートの売却は、金額も大きく、賃貸経営という側面も含むため、様々なトラブルのリスクが潜んでいます。しかし、これらのトラブルは、事前の入念な準備と正確かつ透明性の高い情報開示、そして信頼できる不動産会社のサポートがあれば、十分に回避することができます。
今回ご紹介した「契約不適合責任」「入居者に関するトラブル」「測量・境界に関するトラブル」は、特に注意すべきポイントです。これらの対策をしっかりと行い、安心で円滑なアパート売却を実現しましょう。不安な点があれば、遠慮なく不動産会社や専門家に相談することが、売却成功への一番の近道です。