一棟アパートや一棟マンションの売却は、マイホームの売却とは全く異なる「特殊なスキル」が求められます。動く金額が数千万円〜億単位になるため、依頼する不動産会社の実力差が、そのまま数百万円の「手取り額の差」に直結すると言っても過言ではありません。
しかし、多くのオーナー様が「大手だから」「査定額が高かったから」という理由だけで業者を選び、売却のチャンスを逃してしまっています。
一棟売却は「実需」とは違う!投資専門のパートナーを選ぶ重要性
まず大前提として、「居住用(マイホーム)が得意な会社」と「投資用が得意な会社」は全く別物であることを理解しましょう。
マイホームの売却は「駅からの距離」や「内装の綺麗さ」など、感情的な要素が価格に影響します。一方、一棟売却のターゲットは投資家です。彼らが見ているのは「利回り」や「資産価値」という冷徹な数字だけです。
信頼できるパートナーとは、この投資家目線のロジックを完全に理解し、銀行融資の動向まで把握している「投資専門」の不動産会社に限られます。では、面談時にどこをチェックすればよいのでしょうか。
【極意1】「積算」と「収益」の両面から論理的な査定ができるか
ダメな業者は、近隣の成約事例だけを見て「坪単価これくらいですね」とざっくりした査定を出します。 一方、信頼できる業者は、以下の2つの指標を用いて論理的に価格を算出します。
収益還元法: 家賃収入から逆算して、投資家が好む利回りになる価格設定。
積算評価(原価法): 銀行が融資をする際に重視する、土地と建物の担保価値。
面談の際、「この査定額の根拠は何ですか?」と聞いてみてください。「相場です」と答える業者はNGです。「積算がこれくらい出るので、〇〇銀行を使う投資家ならこの価格で融資が降ります」と、金融機関の目線で回答できる業者こそが本物です。
【極意2】買主への「融資付け」能力と金融機関へのパイプ
一棟物件の売買において、現金一括で購入できる買主はごく一部です。ほとんどの取引は、買主が銀行から融資を受けられるかどうかにかかっています。
つまり、売却を成功させる鍵は、不動産屋が「どこの銀行なら、この物件に融資を出してくれるか」を知っているかどうかにあります。
「買主様の方でローンを探してもらいます」というスタンスの業者は論外です。 「今の市況なら、静岡銀行かオリックス銀行のアパートローンがハマりそうです」といったように、具体的な銀行名と融資条件を即答できる業者を選びましょう。この「融資付け」の能力こそが、一棟売却の生命線です。
【極意3】ポータルサイト頼みではない「独自の顧客リスト」を持っているか
「とりあえずSUUMOやアットホームに載せて待ちましょう」 これは誰でもできる素人の戦略です。実は、優良な一棟物件ほど、ネット上のポータルサイトには掲載されず、水面下で取引されます。
なぜなら、本気の投資家はポータルサイトよりも、信頼できる業者からの「直接紹介(非公開情報)」を待っているからです。また、ネットに晒すことで「入居者に売却を知られて退去される」リスクも防げます。
信頼できる業者は、属性の良い(融資が通りやすい)投資家の顧客リストを自社で抱えています。面談では「御社の抱えている会員(投資家)には、どのような属性の方がいますか?」と質問し、具体的な販売ルートを持っているか確認しましょう。
まとめ
一棟売却を成功させるために、不動産屋選びで見るべきポイントは以下の3点です。
査定の根拠が、投資家・銀行目線で論理的か?
融資付けできる金融機関の知識とパイプがあるか?
ポータルサイト以外に、独自の投資家リストを持っているか?
「査定額の高さ」だけで業者を選んでしまうと、売れ残った挙句に大幅な値下げを強いられる「塩漬け物件」になりかねません。 大切な資産を預けるのですから、提示された金額に惑わされず、その裏にある「販売戦略」と「実力」を厳しく見極めてください。








