「利回り15%!超高収益物件!」 不動産ポータルサイトを見ていると、こうした魅力的な数字が並ぶ一棟アパートを目にすることがあります。特に初めて投資をする方にとって、利回りが高い物件は「早く投資資金を回収できるお宝物件」に見えるかもしれません。
しかし、不動産投資の世界には「高利回りには必ず理由(ワケ)がある」という鉄則があります。 数字の高さだけで飛びつくと、購入後に予期せぬ出費や空室に苦しみ、最悪の場合、破産してしまうケースさえあります。
この記事では、一棟アパート購入時に陥りやすい「高利回りの盲点」と、失敗しないための具体的な対処法を解説します。
「高利回り」の数字だけを信じてはいけない理由
まず大前提として、サイトに掲載されている利回りのほとんどは「表面利回り」であることを理解しなければなりません。
表面利回り = 年間の満室想定家賃 ÷ 物件価格
この計算式には、管理費、税金、修繕費などの「経費」や、空室による「損失」が一切含まれていません。 さらに言えば、利回りが高い(=物件価格が安い)ということは、市場からの評価が低く、「何かしらのリスクがあるから安く売られている」可能性が高いのです。
「利回りが高いから儲かる」のではなく、「リスクが高いから利回りを高くしないと売れない」と読み解くのが、投資家としての正しい姿勢です。ここからは、具体的な3つの盲点を見ていきましょう。
盲点1:修繕費と「客付け費用」の過小評価
築古の高利回りアパートで最も計算が狂いやすいのが、ランニングコストです。
古い物件は安く買えるため利回りは高くなりますが、購入直後に「雨漏り」「給排水管の詰まり」「外壁塗装」などで数百万円単位の修繕費が発生することがあります。
また、意外と見落としがちなのが「広告料(AD)」です。 不人気エリアや競合が多い地域では、入居者を決めるために仲介業者へ家賃の2〜3ヶ月分の広告料を支払わなければならないケースがあります。 表面利回りが15%あっても、修繕費と広告料を差し引いた「実質利回り」が数%まで落ち込むことは決して珍しくありません。
【対処法】
レントロール(家賃表)だけでなく、過去の「修繕履歴」を必ず確認する。
近隣の不動産屋にヒアリングし、「そのエリアで入居者を決めるのに広告料がいくら必要か」を事前に調査する。
盲点2:現在の家賃は「相場」とかけ離れていないか?
「現在は満室で利回り12%」という物件でも安心はできません。その入居者が支払っている家賃が、適正な「相場」かどうかを見極める必要があります。
例えば、新築当時から長期間住んでいる入居者は、今の相場よりも高い家賃を払っていることがあります。もしその人が退去した場合、次の入居者は現在の相場(もっと安い家賃)で募集しなければなりません。
また、悪質なケースでは、売却直前に「サクラ(偽の入居者)」を高額な家賃で住まわせ、見せかけの利回りを吊り上げて売却する「レントロールの偽装」が行われることさえあります。
【対処法】
ポータルサイトで近隣の類似物件を検索し、**「今、募集されている家賃相場」**を確認する。
今の入居者が退去し、家賃が下がった状態でもローン返済ができるか(引き直し計算)を行う。
盲点3:出口戦略(売却)が描けない「再建築不可」リスク
「とにかくキャッシュフローが出ればいい」と割り切って、再建築不可(今の法律では建て替えができない土地)や、極端な過疎地にある高利回りアパートを買う人がいます。
確かに保有期間中は家賃が入りますが、最大の問題は**「売りたい時に売れない」**ことです。 再建築不可物件や地方のボロ物件には、銀行の融資がほとんど付きません。つまり、次に買ってくれる人は「現金一括」で買える人に限定されてしまいます。
結果として、タダ同然の価格で手放すことになり、トータルの収支で大損するリスクがあります。
【対処法】
目先の利回りだけでなく、「積算評価(土地と建物の資産価値)」が出ているかを確認する。
「5年後、10年後にいくらなら売れそうか」という出口戦略をシミュレーションしてから購入する。
まとめ
一棟アパート投資において、高利回りは魅力的な指標ですが、同時に「警戒すべきシグナル」でもあります。
・経費(修繕・広告料) を厳しめに見積もる
・家賃相場 の下落リスクを織り込む
・出口(売却) まで見据えた資産価値を確認する
これらを無視して表面利回りだけで物件を選ぶのは、ギャンブルと同じです。 本当に成功するオーナーは、利回りが多少低くても、立地が良く、資産価値が下がりにくい(=出口が取りやすい)物件を選び、堅実に資産を増やしています。
「うまい話には裏がある」と心得て、数字の裏側に隠されたリスクを慎重に見極めるようにしましょう。








