アパート一棟経営は、安定した家賃収入による資産形成を目指せる魅力的な投資手法です。しかし、その第一関門となるのが「資金計画」。特に「自己資金をいくら用意すればいいのか?」という点は、多くの方が最初に抱く疑問でしょう。
今回は、アパート一棟買いに必要な自己資金の目安と、見落としがちな初期コスト(諸費用)の内訳を具体的に解説します。健全な経営をスタートさせるために、しっかりとした資金計画を立てましょう。
自己資金の目安は「物件価格の1〜3割」
結論から言うと、アパート一棟買いで用意すべき自己資金の目安は物件価格の10%〜30%と言われています。
例えば、5,000万円の物件であれば500万円〜1,500万円が一つの目安となります。
「なぜそんなに必要なの?」「フルローンは組めないの?」と思われるかもしれませんが、自己資金を用意することには大きなメリットがあります。
金融機関の融資審査が有利になる
自己資金を出せるということは、計画性や返済能力の証明になります。融資が承認されやすくなるだけでなく、より低い金利で借り入れできる可能性が高まります。
諸費用(初期コスト)の支払いに充当できる
後述しますが、物件価格以外にも様々な費用が現金で必要になります。
購入後の安定経営につながる
購入直後に予期せぬ修繕が発生したり、一時的に空室が増えたりしても、手元資金があれば慌てずに対処できます。
近年、金融機関の不動産投資ローンへの姿勢は厳格化しており、フルローン(物件価格の100%を融資)のハードルは非常に高くなっています。
健全な経営を目指すなら、ある程度の自己資金は必須と考えましょう。
▼5,000万円の物件を購入した場合の諸費用シミュレーション(目安)▼
この費用は基本的に現金で支払う必要があるため、自己資金計画に必ず含めておきましょう。
物件価格にばかり目が行きがちですが、不動産購入時には物件価格とは別に諸費用がかかります。この諸費用の目安は、物件価格の7%〜10%程度です。
【一覧】見落とし厳禁!アパート購入の初期コスト(諸費用)
費用の種類 費用の目安 概要
仲介手数料 約171万円 不動産会社に支払う成功報酬。(物件価格×3%+6万円)+消費税が上限。
登記費用 約70万~120万円 所有権移転や抵当権設定の登記。登録免許税(税金)と司法書士報酬。
不動産取得税 約50万~80万円 不動産を取得した際に一度だけかかる税金。購入後数ヶ月で納税通知が届く。
印紙税 6万円 売買契約書や金銭消費貸借契約書(ローン契約)に貼付する印紙代。
ローン関連費用 約50万~150万円 金融機関に支払う事務手数料や保証料。借入額の1~3%が目安。
火災保険・地震保険料 約30万~80万円 ローン利用の必須条件。通常、複数年分をまとめて支払う。
固定資産税等の清算金 約10万~20万円 その年の固定資産税・都市計画税を、売主と買主で日割り計算して精算。
合計 約387万~627万円 物件価格の約7.7%~12.5%
※上記はあくまで一般的な目安です。物件の評価額や構造、金融機関によって金額は変動します。
特に忘れがちなのが、購入から数ヶ月後に納税通知が届く「不動産取得税」です。
いざという時に資金不足にならないよう、この分は必ず別に確保しておきましょう。
自己資金を抑えるリスク
「どうしても自己資金が足りない…」という場合、諸費用分もローンに組み込む「オーバーローン」を提案されることがあるかもしれません。
しかし、これには大きなリスクが伴います。
・借入額が増え、返済比率が悪化する
・金利が高くなる傾向がある
・空室や家賃下落に対する耐性が弱くなる
借入額が大きくなると、毎月の返済額も当然増えます。
これによりキャッシュフローが圧迫され、少しの空室でも収支が赤字になる危険性が高まります。
まとめ:余裕のある資金計画が成功の鍵
アパート一棟買いは、決して「少ない元手で始められる」投資ではありません。
・自己資金の目安は物件価格の1〜3割
・諸費用として、さらに物件価格の7〜10%を現金で用意する
・購入後の突発的な出費に備える「予備費」も考慮する
これらを念頭に置き、余裕を持った資金計画を立てることが、長期にわたる安定したアパート経営を実現するための第一歩です。まずはご自身の用意できる自己資金を把握し、そこから購入可能な物件の価格帯を逆算していくのが、失敗しないためのアプローチと言えるでしょう。