一棟アパート購入は資産形成の強力な武器ですが、市場環境の変化により過去の常識が通用しなくなっています。建築費高騰や金利上昇など、最新のトレンドを踏まえた「失敗しないための豆知識」をプロが解説します。
表面利回りの裏に潜む「見えないコスト」の正体
不動産投資において「利回り」は重要な指標ですが、昨今の経済情勢の変化により、表面上の数字だけでは見えない「隠れコスト」が急増しています。
かつてのシミュレーション通りに収益が上がらず、購入後に資金繰りが悪化するケースが増えています。今、一棟アパートを購入するなら絶対に知っておくべき、最新の「コスト」と「リスク」に関する3つの豆知識をご紹介します。
豆知識1:インフレ直撃!「修繕費」は過去の相場で計算してはいけない
中古アパート購入時に必須の「大規模修繕(外壁塗装・屋上防水など)」。この費用見積もりを、数年前の感覚で行っていませんか?
近年、資材価格と人件費の高騰(インフレ)により、建築・リフォーム費用は劇的に上昇しています。
「5年前なら150万円でできた塗装工事が、今は250万円かかる」ということも珍しくありません。
不動産会社が出すシミュレーションの修繕積立金が、現在の相場を反映しているか必ず確認してください。甘い見積もりは、将来のキャッシュフロー破綻に直結します。
豆知識2:火災保険料は「値上げ」と「期間短縮」のダブルパンチ
地味ですが、手取り収入(キャッシュフロー)を確実に削ってくるのが「火災保険料」です。
自然災害の増加に伴い、損害保険各社は火災保険料の値上げを繰り返しています。さらに、かつては最長36年や10年で契約できた期間が、現在は「最長5年」に短縮されています。
これは、5年ごとに「値上がりした新しい保険料」で契約更新しなければならないことを意味します。長期的な収支計画において、保険料の増加分をあらかじめ織り込んでおくことが、最新の鉄則です。
豆知識3:金利上昇局面に備える「返済比率」の黄金ライン
長らく続いた超低金利時代が終わり、日本でも金利のある世界が戻りつつあります。
これから一棟アパートローンを組む場合、変動金利の上昇リスクを以前よりもシビアに見積もる必要があります。
そこで重要になるのが「返済比率(家賃収入に占めるローン返済額の割合)」です。
かつては50%〜55%でも安全圏と言われていましたが、金利上昇やコスト増を見据え、「50%以下、理想は45%前後」に抑えるのが最新の安全基準です。自己資金を多めに入れるなどして、金利が多少上がっても耐えられる財務体質を作ることが、破綻を防ぐ唯一の防御策です。
まとめ
一棟アパート購入で「大丈夫」と言い切るためには、過去の成功体験ではなく、現在の経済状況に即した知識が必要です。
・修繕費のインフレ高騰を考慮する。
・火災保険料の値上げを計算に入れる。
・金利上昇に耐えられる返済比率に抑える。
この3つの豆知識を頭に入れ、提示されたシミュレーションを「厳しめ」に見直してみてください。その慎重さが、あなたの資産と未来を守ることに繋がります。




