「中古一棟アパートは利回りが高い」という話を聞いて、不動産投資を検討している方は多いのではないでしょうか。確かに、築古物件は表面利回りが高く見え、魅力的に映ります。しかし、その甘い言葉の裏には、見えないリスクが潜んでいることをご存知でしょうか?
表面的な数字だけに惑わされず、建物の状態を正確に把握しなければ、思わぬ修繕コストで収支が赤字になることも。今回は、中古一棟アパート購入時に注意すべき建物状況と、それに伴う修繕コストについて解説します。
表面利回りだけでは見えない「隠れたコスト」とは
中古一棟アパートの利回りを計算する際、多くの方が家賃収入から経費を差し引く「実質利回り」を重視します。しかし、この経費計算に「将来の大規模修繕費用」を含めていないと、購入後に大きな後悔をすることになります。
特に築年数が経過した物件は、以下のような部分に劣化が生じ、数年後には高額な修繕費用が発生する可能性が高いのです。
・外壁や屋根の再塗装
・給排水管の交換
・共有部の修繕(廊下、階段、手すりなど)
これらのコストは、数百万円から時には1,000万円以上にもなることがあり、投資計画を大きく狂わせる原因となります。
契約前に必ずチェックすべき「建物状況」5つのポイント
中古一棟アパートの建物状況を正確に把握するためには、契約前にプロの目でチェックすることが不可欠です。以下に、特に注意すべき5つのポイントを挙げます。
外壁と屋根
ひび割れや塗装の剥がれがないか確認しましょう。特に、外壁のシーリング(コーキング)の劣化は、雨水の侵入による雨漏りや建物の腐食に直結します。外壁や屋根は大規模修繕の費用が最もかさむ部分です。
構造躯体(基礎・柱・梁)
建物の骨組みとなる部分です。基礎に大きなひび割れはないか、建物全体に傾きがないかを確認してください。建物のゆがみは、扉の開閉がしにくい、床が傾いているといった現象で気づくこともあります。
給排水管
見えない部分ですが、最も重要なチェックポイントの一つです。鉄管が使われている場合、錆による水の濁りや漏水のリスクがあります。給排水管の交換には、壁や床を剥がす工事が必要となり、非常に高額な費用がかかります。
共用部
階段や手すり、共用廊下の床材に大きな劣化や破損がないか確認します。これらの部分は入居者の安全に直結するため、日頃から修繕計画を立てておく必要があります。
設備機器
室内の給湯器やエアコン、集合ポストなどの耐用年数を確認します。すべて一斉に交換時期を迎えると、そのコストは大きな負担となります。
失敗しないための「賢い購入プロセス」
これらの修繕コストを見積もるには、専門知識が不可欠です。そこで、不動産投資の初心者が失敗しないためには、以下のステップを踏むことを強く推奨します。
買付証明書提出前の情報収集
物件の図面や修繕履歴、長期修繕計画書を売主に請求し、情報収集を徹底します。
ホームインスペクション(建物状況調査)の依頼
買付証明書提出後、売主との交渉時に**「ホームインスペクション」**の実施を提案します。これは、建築士などの専門家に建物の状態を詳細に診断してもらうサービスです。ホームインスペクションの結果、重大な欠陥が見つかれば、価格交渉の材料にしたり、契約を白紙に戻すことも可能です。
契約書の確認
契約書に**「瑕疵担保責任(契約不適合責任)」**の期間や範囲が明記されているか確認しましょう。もし重大な欠陥が後から見つかった場合でも、この条項によって売主に修繕費用を請求できる可能性があります。